砂喰いのデザート

的外れな意見を偉そうな顔で言ってくる人たちが沢山いる場所では、ああここは僕が平気でいれる場所ではないなぁと思いつつ、じゃあ僕の居場所はどこなのだろう、と思う。 大きく的を外し地面に間抜けに突き刺さった矢の残骸たちを見ているとニヤニヤしてくる。あーうんざりするほど可笑しな世の中だと。こぼれ落ちたニヤニヤを拾い集めたら家に帰れるだろう。 お菓子の家に飛びついて、「あーこのドアノブのマカロン美味しいですぅ」だとか「マカデミアナッツで壁を装飾されてるなんてすてきー!」だとか言っている人たちは歯を磨かないからそのうちに虫歯になるだろう。
しかし実際はお菓子の家は砂でできている。ラズベリーの果肉入りビターチョコのフローリングもバニラウエハースの階段も綿菓子のソファも全部砂でできている。いくら甘味料や着色料でうまくごまかしても口に入れればすぐに気づくはずなのだ。 添加物という魔法を振りまいたカラッポの生き物が闊歩する。 しかしこの生き物には影がない。実体がないから影がついてこない。砂は集まりあって初めて形になる。 影は交差点の信号の手前でたじろぎ続ける。それは滑稽でもある。戸惑う影に覆われた森はジメジメしている。 こぼれ落ちたニヤニヤを拾い集めて家に帰ってきた。家の壁にこびりついたニヤニヤたちが一斉に「おかえり」と言って集まってくる。ニヤニヤは部屋の中で共鳴し合いやかましい。僕はそのうちに頭が痛くなる。 ヘクセンハウスが嫌いだからと言って、こここそが良い場所であるとは限らない。この家も同じように砂の停留地に過ぎないのかもしれない。 テレビやSNSはヘクセンハウスを美味しそうに紹介している。古くはこんな建物ばかりではなかったはずだ。しかし多くはシロアリに食い散らかされた。食い散らかされたうえに最近では無関係な子孫がその残骸を引っ張り出して、さも自分たちが作ったかのように「クールだろ?」と巣の中で自慢大会を繰り広げる。消費されては捨てられその跡地には軽い家が経ち並ぶ。 この辺一帯を覆い尽くす大きなヘクセンハウスは致死量を超える添加物を使っているらしい。それでもなぜか普通に生きてしまっている僕は何物なんだろう。

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